➀はじめに

権利関係の次に受験生を悩ませるのが、『法令上の制限』の専門用語です。「用途地域」や「開発行為」といった言葉を前に、「意味だけではなくすべて数字まで丸暗記しなくては」と不安を感じている方も多いかと思います。

合格に必要なのは、そのルールがなぜ存在するのかという「街づくりの本質」を理解することです。理由さえ分かれば、丸暗記せずに理解をすることができ、得点力に繋がっていきます。法令上の制限には多くの法律が含まれますが、この記事では特に配点が高く得点源となる『都市計画法』と『建築基準法』の2大法律に絞って、初学者がつまずきやすい重要用語を本質から解説します。

また、後半には最新の令和7年(2025年)度を含む過去問解説も用意しました。この記事を通して、丸暗記に頼らない「正しい得点力」を身につけていきましょう。

➁専門用語解説

都市計画区域・準都市計画区域

都市計画区域: 「一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある」として指定された区域。
準都市計画区域:
都市計画区域外の土地で、将来的な開発が見込まれる区域において、無秩序な建築を防ぎ、土地利用を計画的に規制する区域。

「都市計画区域」と聞くと、ビルが立ち並ぶ市街地だけをイメージしがちですが、実はその周辺の農地や山林まで含んだ非常に広いエリアを指します。「街とその周辺をセットで管理したほうが、バランスの良い街づくりができる」と判断された範囲が指定されるからです。イメージとしては、中心部から郊外までを丸ごとカバーする「大きな街の枠組み」が都市計画区域。
その枠組みの外側にある、高速道路のインターチェンジ周辺などの開発が見込まれる区域で規制すべき区域が「準都市計画区域」です。それ以外の、規制がほとんどない手付かずの場所を「都市計画区域外」と言います。
この広大な「都市計画区域」の中を、さらに実情に合わせて市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域の3つに色分けして、きめ細かく管理していくことになります。

市街化区域・市街化調整区域・非線引き区域

市街化区域: 都市計画区域のうち、既に市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。
市街化調整区域:
都市計画区域のうち、市街化を抑制すべき区域。
非線引き区域:
都市計画区域のうち、市街化区域と市街化調整区域の区分(線引き)が定められていない区域。

市街化区域の本質は、「積極的に建物を建てて、街を発展させていく区域」です。そのため、多くの税金を投じ、道路や上下水道、ガス、電気などのインフラを優先的に整備していきます。一方で市街化調整区域の本質は、「建物を建てさせない区域」です。ここは農地や自然のままにしておきたい区域です。したがって建物を建てる時は原則都道府県知事の許可が必要です。
都市計画区域は、基本的にはこの2つに区分されます(これを「線引き」と呼びます)。しかし、中にはあえて区分せず、保留にしている「非線引き区域」という区域も存在します。
なぜわざわざこのように分けるのかというと、最大の目的は「無秩序な街づくりを防ぐため」です。もしバラバラに人が住んでしまうと、たった数軒の家のために遠くまでインフラを引かなければならず、膨大な税金(維持コスト)がかかってしまいます。住む場所を限定して管理しやすくすることで、コストを抑え、効率的な街づくりができるようになるのです。

開発行為

定義: 主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う、土地の区画形質の変更。

「開発行為」を正しく理解するための本質は、「建物を建てるという行為」と「そのために土地を整備するという行為」が一体となっていることにあります。単に土地を整備する(区画形質の変更)だけでは、開発行為には該当しません。そこに「建物を建てる(またはゴルフ場などの特定工作物を作る)」という目的が伴って、初めて法律上の「開発行為」として規制の対象になります。
なぜ、この両者が揃う必要があるのでしょうか。それは、大きな建物を建てるために大規模な切土や盛土を行って土地を整備すれば、地盤の安定性が損なわれたり、雨水の流れが変わって崖崩れを引き起こしたりする危険があるからです。街全体の安全を確保するために、「建築物の建築を前提として土地を整備するのであれば、事前に知事のチェック(許可)を受けなさい」というルールになっているのです。
試験対策として整理すべきは、この「建築物の建築」と「土地の整備」のどちらかが欠ければ、開発行為にはならないという点です。

・建物は建てるが、土地を整備する作業(形質の変更)は行わない(例:すでに平坦な土地に、そのまま建物を建てるだけ)
・土地を整備する作業(形質の変更)は行うが、建物は建てない(例:建物を建てる目的がなく、単に青空駐車場にするために土地を整地するだけ)

これらは、開発許可を必要とする「開発行為」にはあたりません。あくまでも「建築物の建築と、土地を整備する土木工事をセットで行う」という二つの行為が結びついている状態をイメージすることが、法令上の制限を攻略する土台となります。

斜線制限・日影規制

斜線制限: 建物の各部分の高さを、境界線からの距離に応じて「空間」を制限する
日影規制:
冬至の日を基準に、周囲に一定時間以上の影を制限する

斜線制限は、道路や隣の家の日当たり・風通しを確保するために、「空間」を制限し、その枠内に建物を収めるというものです。斜線制限には以下の3種類があります。

1.道路斜線制限:道路の開放感や日当たりを確保するための制限(全区域で適用)。
2.隣地斜線制限:隣の敷地の日当たりや風通しを確保するための制限。
3.北側斜線制限:北側にある隣地の住宅の日当たりを、特に手厚く守るための制限。

この制限は種類や用途地域によって適用されるかされないか分かれますが、細かくなるので省略します。

日影規制の本質は隣人の日当たりの保護です。具体的には、一年で最も日が短い冬至の日に、隣の家の敷地に「何時間以上影を落としてはいけない」と定められています。

斜線制限との最大の違いとして日影規制は「地方公共団体の条例で指定された区域内でのみ適用される」という点にあります。法律で一律に適用されているわけではなく、各自治体が「このエリアは日当たりを特に保護すべきである」と判断して初めて、具体的に規制されます。ただし、「商業地域」「工業地域」「工業専用地域」には適用されません。なぜなら、これらの地域は、日当たりよりも「建物を密集させてビジネスをすること」や「工場の稼働」を優先するエリアです。そのため、「隣人の日当たりを保護する(日影規制)」というルールはなじまない、と判断されるからです。

接道義務

接道義務(原則): 建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならないというもの。

接道義務の本質は、「消防車や救急車などが敷地内に入るための動線を確保すること」です。この原則にはいくつか例外がありますが、その中でも試験で特に重要な「2項道路」について解説します。
2項道路とは、幅員が4mに満たない古い道であっても、特定行政庁が指定したものは建築基準法上の道路とみなす、というものです。ただし、家を建てる際には、道路の中心線から2m後退(セットバック)して、4mの幅員を確保しなければなりません。このとき、後退した部分は「自分の敷地であっても道路(私道)にしなければならない」という扱いになります。そのため、自分の土地であっても私道の部分には建物を建てたり、門や塀を作ったりすることはできなくなります。これを「私道負担」と言います。

③近年の重要過去問の解説

令和7年(2025年)問16

2.開発行為とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいい、ゴルフコースの建設は開発行為にはあたらない。
→誤り。開発行為の本質は「建物を建てるための土地整備」ですが、建物以外の「特定工作物」を作るための整備も含まれます。ゴルフコースは、その代表的な「第二種特定工作物」です。つまり、ゴルフコースを作るために土地を整備することは、開発行為に該当します。

令和6年(2024年)問15

2.準都市計画区域については、用途地域が定められている土地の区域であっても、市街地開発事業に関する都市計画を定めることができない。
→正しい。 準都市計画区域の本質は、将来の開発に備えて「あらかじめ規制をかけておく区域」です。
一方、市街地開発事業はニュータウン建設などの「積極的な街づくり」の事業です。規制を主目的とする区域で、大規模な街づくり事業を行うことはできません。

令和5年(2023年)問15

1.市街化調整区域は、土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備に支障が生じるおそれがある区域とされている。
→誤り。この設問の文章は、「準都市計画区域」の定義です。市街化調整区域の本質は、これまで解説してきた通り「市街化を抑制すべき区域」です。

④まとめ

今回は「法令上の制限」の中でも、特に配点の高い都市計画法と建築基準法を中心に、重要用語の本質を解説してきました。
「用途地域」や「接道義務」といった言葉の裏側には、必ず「なぜそのルールがあるのか」という理由があります。その理由を理解してしまえば、膨大な数字や規制も、自然と頭に残るはずです。

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