宅建の通信講座には多くの講師がいます。全国向けの映像講義を担当している講師もいれば、校舎で対面授業を担当しながら映像講義も担当している講師もいます。そして、実際に複数の講師の授業を見ていくと、その指導力にはかなり大きな差があります。法律を深く理解し、初学者が理解できる順序まで考え抜いて授業を作っている講師もいれば、テキストに書かれている内容を順番に読み上げ、多少の説明を加えるだけで講義が進んでいく講師もいます。

なぜ、同じ宅建の映像講師でここまで指導力に差が生まれるのでしょうか。この記事では、大学受験予備校の講師が育ち、競争し、選抜されていく環境と比較しながら、その理由を解説します。

➀宅建に詳しいことと教える力は別

宅建に詳しいことと、宅建を教えるのが上手いことは別の能力です。自分が宅建試験に合格するのであれば、自分自身が法律を理解し、問題を解ければ十分です。しかし、講師として初学者に教えるためには、自分が理解しているだけでは足りません。初めて法律を勉強する人が何を知っていて、どこで分からなくなるのかを考え、難しい内容を理解できる形に変えて説明する必要があります。どの順番で説明するのか、どの具体例を使うのか、どこまで説明してから次の知識へ進むのかによっても、受講生の理解度は変わります。

さらに、試験対策の講師には宅建試験そのものを研究する力も必要です。何をどこまで教えるのか、どの知識を優先するのか、本試験でどのように問われるのか、学んだ知識を問題を解く力につなげるにはどう教えるのかまで考える必要があります。宅建士であること、法律系資格を持っていること、法律知識が豊富であることだけで、指導力まで決まるわけではありません。そこで重要になるのが、知識を持っている人の中から、指導力の高い講師がどのように育ち、どのように選ばれていくのかです。

➁大学受験予備校には淘汰の仕組みがある

大学受験予備校では、講師として採用された人が、最初から予備校を代表する講座や全国向けの映像講義を担当するとは限りません。予備校によって仕組みは異なりますが、実際の授業を担当し、そこで評価されながら担当する仕事が変わっていきます。最初は比較的重要度の低い授業を担当し、評価されれば受験学年や浪人生などの授業を任される。さらに評価されれば担当する授業や校舎が増える。そこで高い評価を受ければ、より重要な校舎や講座を担当する。その中でも高く評価された講師が、全国向けの映像講義を担当する。このように、実際の授業を通して何段階も講師を選抜していくことができます。

しかも、この競争は上へ進むためだけのものではありません。大学受験予備校の講師は、採用された後も実際の授業を通して評価され続けます。生徒からの評価や講座の受講状況などが次の担当に影響し、評価されれば担当する授業が増える一方、評価されなければ担当が減り、その後の授業を任されなくなることもあります。同じ科目を担当できる別の講師もいるため、講師として採用された時点で安泰になるわけではありません。

つまり、大学受験予備校には、講師を採用して終わるのではなく、実際の授業を何度も経験させ、その中で評価し、競争させ、指導力のある講師を上へ選抜していく仕組みがあります。評価されなければ上へ進めないだけでなく、担当そのものを失うこともある。その厳しい競争と淘汰を繰り返した先に、予備校を代表する講師や全国向けの映像講師がいます。

多数の講師が競争する

このような厳しい競争を成立させているのが、大学受験市場そのものの大きさです。大学受験予備校には、高校1年生、高校2年生、高校3年生、浪人生がいます。科目も英語、数学、国語、理科、社会などに分かれ、さらに同じ英語でも、生徒の学力や志望大学によって講座を細かく分けることができます。通常授業だけでも大量の講座を作ることができ、そこに夏期講習、冬期講習、直前講習、大学別対策などが加わります。同じ英語という一つの科目だけでも、対象となる生徒や目的の異なる授業を同時に大量に成立させることができます。

そして、それだけの授業を受ける生徒がいます。大量の生徒と大量の授業があるからこそ、同じ科目に多数の講師を抱えることができます。多数の講師に実際の授業を担当させ、評価された講師には担当を増やし、複数の校舎を任せ、さらに重要な講座へ進ませる。一方、評価されない講師の担当を減らし、別の講師に任せることもできます。講師を厳しく評価するといっても、代わりに授業を担当できる講師がいなければ簡単には交代させられません。大学受験予備校には、多数の講師を競争させ、その講師たちに実際の授業を与えられるだけの需要があります。だからこそ、評価によって仕事を増減させながら何段階もの競争と淘汰を続けることができます。

授業経験が講師を育てる

大量の授業は、講師を選抜するためだけに使われるものではありません。実際の授業そのものが講師を育てます。人に教える能力は、法律や試験の知識を増やすだけでは身につきません。実際に授業をすると、自分では分かりやすいと思っていた説明が生徒には伝わらないことがあります。具体例を変えた方が理解してもらえることもあれば、説明する順番そのものを変えた方がよいこともあります。そこで説明を修正し、次の授業で試し、また生徒の反応を見る。同じ単元を別のクラスや別の校舎で教えれば、短期間に何度もこの改善を繰り返すことができます。

大学受験予備校では、担当が増えれば一週間に何コマもの授業を行い、それを年間を通して続けることができます。講師歴が長くなれば、それだけ膨大な授業経験を積むことになります。予備校によっては研修や模擬授業なども行われ、そこに大量の実際の授業が加わります。しかも、その実戦には常に評価が伴います。指導力を高めなければ担当を失う可能性があり、指導力を高めて評価されれば、さらに多くの授業を任され、より多くの実戦経験を積むことができます。育成、実戦、評価、競争、淘汰が連続して起こる環境です。

講師を本業にできる

大学受験予備校には、講師を本業として生きていけるだけの仕事量もあります。高校1年生から浪人生まで複数の学年があり、通常授業に加えて夏期講習、冬期講習、直前講習などもあります。年間を通してさまざまな授業が存在するため、評価されて担当を増やしていけば、予備校講師だけで多くの授業を担当できます。さらに、全国区の人気講師まで進めば、全国向けの映像講義、参考書の出版など仕事の幅も広がります。トップクラスの予備校講師には非常に大きな収入を得られる世界もあります。

そのため、大学受験予備校には、予備校講師そのものを自分の職業として長く続け、講師として上を目指す人も集まります。授業を研究して指導力を高め、生徒から評価され、他の講師との競争に勝つことが、担当する仕事、収入、キャリアに直接つながります。評価されれば大きな仕事へ進むことができ、評価されなければ担当する授業を失うこともある。大学受験予備校には、大量の授業があり、講師を本業にでき、その中で指導力によって仕事量が変わる市場があります。講師が本気で競争し、その競争の中から指導力の高い講師を選抜できる土台そのものが大きいのです。

③宅建では同じ競争環境を作りにくい

ここまで見てきた大学受験予備校と比べると、宅建講師を取り巻く環境は大きく異なります。これは宅建の予備校や通信講座が講師の育成をしていないという意味ではありません。そもそも、受講生数や授業需要、必要となる講師数が大学受験とは異なるため、同じ規模で大量の講師を競争させ、何段階にもわたって選抜する環境を作りにくいということです。

受講生数と授業需要が違う

宅建は年1回、一つの試験に向けて勉強する資格試験です。資格予備校では、12月生、1月生、2月生、4月生など、開始時期の異なるコースを用意することもできます。しかし、大学受験における高1、高2、高3、浪人生や、基礎クラス、難関大学クラス、大学別対策などとは意味が違います。

宅建の○月生は、開始する時期が違っても、最終的には同じ宅建試験を受験します。勉強する試験範囲も基本的には同じです。そのため、開始時期の違うクラスを途中から同じ日程に合流させるような講座設計もできます。大学受験では、高1の英語と高3の難関大学向け英語を途中で同じクラスに合流させることはできません。対象となる生徒も、授業の目的も、教える内容も違うからです。学年、学力、科目、志望大学などが違えば、それぞれ別の授業需要として存在し続けます。

宅建は、開始時期を複数に分けても、そこから大学受験と同じ規模で大量の独立した授業が生まれるわけではありません。さらに、そもそもの受講生数にも大きな差があります。その結果、必要になる講師数も違います。同じ会社で大量の宅建講師を抱え、その全員に十分な授業を担当させ、評価された講師に担当を増やし、さらに複数の校舎を任せ、重要な講座へ上げ、その中から全国向けの映像講師を選ぶ。そのような選抜を何段階も繰り返すための授業需要は、大学受験ほど大きくありません。

校舎型では育成・選抜も働く

校舎を持って対面授業を行っている資格予備校では、宅建講師が実際の受講生を相手に授業をする機会があります。同じ宅建講座でも複数の開講時期やクラスが用意されていることがあり、講師が授業経験を積むこともできます。実際の受講生を教えれば、説明が伝わったのか、生徒がどこで理解できなかったのかを経験できます。複数の講師がいれば評価を比較することもでき、評価の高い講師に重要な授業を任せることもできます。校舎を持つ資格予備校では、実際の授業を通した育成や評価、選抜が働きます。

それでも大学受験予備校とは規模が違います。大学受験では、一つの科目だけでも学年、学力、志望大学などによって大量の独立した授業を作ることができ、その授業を担当する多数の講師を必要とします。講師を何段階も競争させるためには、競争する講師の人数だけでなく、その全員に実戦経験を与えられるだけの授業が必要です。宅建にも講師の育成や選抜はありますが、それを大学受験予備校と同じ規模、同じ厳しさで繰り返せる環境ではありません。

通信講座は一人で全国を担当できる

通信講座になると、さらに少ない講師で多数の受講生を担当できます。一度講義を収録すれば、同じ映像を何百人、何千人もの受講生に提供できるからです。非常に指導力の高い講師が一人いれば、その講師の授業を全国の受講生に届けられることは、通信講座の大きな強みです。

一方、講師を育成し、競争させ、選抜するという視点から見ると、大学受験予備校とは構造が大きく違います。大学受験予備校では、大量の教室授業が存在するため、多数の講師に実際の授業を担当させることができます。通信講座では、一人の講師が講義を収録すれば、その映像を大量の受講生が視聴できます。大量の講師に実際の授業を経験させ、その中で評価された講師に担当を増やし、複数の校舎や重要な講座を経験させ、その中から全国向けの映像講師を選ぶ。そのような多段階の競争と淘汰を行うには、それだけの授業需要が必要です。宅建の通信講座は、少ない講師で多数の受講生を教えられる効率的な仕組みだからこそ、大学受験予備校のように大量の講師を実戦で競争させる必要性も小さくなります。

④映像講師でも指導力には差がある

大学受験予備校では、大量の講師に実際の授業を担当させ、その中で評価し、担当を増減させ、より重要な授業へ進ませることができます。講師自身も大量の実戦によって鍛えられ、講師を本業として他の講師と競争します。評価されれば上へ進み、評価されなければ担当を失うこともあります。

宅建では、受講生数、独立して成立する講座数、必要となる講師数が大学受験とは大きく異なります。通信講座になれば、一人の講師が全国の受講生を担当することもできます。そのため、大量の講師を実際の授業で何段階にもわたって競争させ、上位の講師を選抜していく大学受験予備校ほど強い淘汰の仕組みは作りにくくなります。だからこそ、宅建では「全国向けの映像講師を担当している」という肩書きだけを見て、その講師の指導力まで判断することはできません。

同じ映像講師でも授業の質は違う

実際に宅建の映像講義を数多く見ていくと、同じ「全国向けの映像講師」という肩書きでも、授業の質にはかなり大きな差があります。法律を初めて勉強する受講生を対象とした講義で、その制度が何のためにあるのか、どのような場面で使われるのかといった全体像から説明し、既に学んだ知識とつなげながら、初学者が理解できる順番で法律上の結論まで導く講師がいます。

同じ初学者向けの映像講義でも、制度の全体像や前提となる知識をほとんど説明しないまま、初学者が当然知っているはずもない専門用語を使い、いきなり細かな法律上の性質や結論から説明を始める授業もあります。講師が持っている知識を順番に話すことと、初学者が理解できる順番で教えることはまったく違います。さらに、法律上の結論をテキストに沿って説明することが講義の中心になっている講師もいれば、なぜその結論になるのか、似た制度と何が違うのか、本試験ではどのように問われるのかまで考えて授業を作っている講師もいます。

これらが同じ「全国向けの映像講師」という肩書きの中に存在します。単に話し方や授業スタイルに好みの違いがあるという程度ではなく、法律に対する理解、初学者への説明力、授業設計、宅建試験の研究量まで含めて、講師による指導力には大きな幅があります。

⑤広く探せばトップ講師も見つかる

宅建の映像講師に大きな差があるからこそ、講師は一つの予備校や通信講座の中だけで選ばず、かなり広く探す価値があります。校舎を持つ資格予備校、通信を中心とする講座など、複数の会社まで候補を広げれば、それだけ多くの講師の授業を見ることができます。

実際に多くの講師を見ていけば、その中には宅建業界全体で見てもトップクラスといえるほど指導力の高い講師がいます。法律を深く理解し、初学者がどこで分からなくなるのかを考え、説明する順番まで作り込み、具体例を使って制度を理解させ、学んだ知識を本試験で使えるところまで考えて授業を作っている講師です。同じ「映像講師」という肩書きの中に大きな指導力の差がある以上、最初に見つけた一人だけを見て決める必要はありません。複数の予備校・通信講座まで対象を広げ、YouTubeや無料体験講義などを使って複数の講師の授業を実際に見てください。かなり広く探してきちんと選べば、全国向けの映像講師の中から非常に高い指導力を持つ講師を見つけることができます。

通信講座を選ぶときに、なぜ合格率や料金、教材などより講師を重視するのか、実際にどのような基準で通信講座を選べばよいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座の選び方|講師との相性を最優先すべき理由

また、多くの講師の中から指導力の高い講師を見つけるために、実際の講義のどこを確認すればよいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座で「指導力」がある講師を見抜くための方法

⑥まとめ|肩書きではなく実際の授業で選ぶ

大学受験予備校では、巨大な生徒数と授業需要を背景に、多数の講師へ実際の授業を担当させることができます。大量の実戦経験によって講師を育て、その中で評価し、競争させ、担当を増減させる。評価された講師にはさらに重要な講座や校舎を任せ、評価されなければ担当を失うこともある。その厳しい競争と淘汰を何段階も繰り返した先に、全国向けの映像講師があります。

宅建では、一つの試験を目指す受講生に対して基本的に同じ試験範囲を教えるため、開始時期を複数に分けても大学受験ほど大量の独立した授業需要は生まれません。校舎型の資格予備校では実際の授業を通した育成や選抜も働きますが、その規模は大学受験とは異なります。さらに通信講座では、一人の講師の映像を全国の受講生へ届けることができます。その環境の違いによって、宅建では同じ全国向けの映像講師でも指導力に大きな幅がありますそして、その幅の上には、宅建業界全体で見てもトップクラスの指導力を持つ講師もいます。

複数の予備校・通信講座まで候補を広げ、実際の講義を数多く見て、その中からきちんと講師を選んでください。「全国向けの映像講師」という肩書きだけで決めるのではなく、本当に指導力の高い講師を探す。そこまで探せば、映像講師の中にも非常に高い指導力を持つ講師はいます。