
宅建の通信講座を選ぶとき、「人気講師が担当している」「分かりやすいと評判」といった情報を参考にする方は多いと思います。もちろん、人気があること自体は悪いことではありません。しかし、人気があることと、受講生を宅建試験に合格させるための「指導力」が高いことは同じではありません。
では、通信講座の講師の「指導力」は、どこを見て判断すればよいのでしょうか。この記事では、人気だけでは講師の指導力を判断できない理由と、実際の講義から「指導力」がある講師を見抜くために確認したいポイントを、実際に宅建を指導している立場から解説します。
通信講座そのものを選ぶときに、なぜ合格率や料金、教材などより講師を重視するのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座の選び方|講師との相性を最優先すべき理由
<目次>
①人気だけでは講師の「指導力」を判断できない
通信講座では「売れる力」も重要になる
通信講座は、多くの受講生に選んでもらうことでビジネスが成り立っています。そのため、講師自身に「この人から習いたい」と思ってもらえる魅力があることには大きな価値があります。
例えば、美人・イケメンであること、有名大学出身であること、弁護士などの目を引く肩書き、芸人など人前で話すことに慣れた経歴、知名度、聞きやすい声、話のテンポ、親しみやすいキャラクター、SNSでの発信力などです。こうした要素は、受講生がその講師に興味を持ち、「この先生の講義を受けてみたい」と思うきっかけになります。また、「話が面白い」「テンポがいい」「覚えやすい」といった特徴は、短い体験講義でも比較的分かりやすいものです。こうした魅力によって実際に講座が売れれば、申込数や売上という数字にも表れます。
つまり、通信講座では、宅建を教える指導力とは別に、受講生から選ばれ、講座の申込みにつなげる「売れる力」にも大きな価値があります。もちろん、「売れる力」と「指導力」は両立します。人気があり、なおかつ指導力も高い講師も当然います。問題なのは、この二つを同じ能力として考えてしまうことです。
「売れる力」は見えやすく「指導力」は見えにくい
「売れる力」は比較的分かりやすく結果に表れます。多くの受講生から選ばれれば申込数や売上につながり、SNSで人気が出ればフォロワー数などにも表れます。口コミでも「話が面白い」「説明が分かりやすい」といった評価を見ることができます。
一方、その講師の授業によって受講生がどこまで理解し、宅建試験に合格できる力を身につけたのかを正確に測ることは簡単ではありません。同じ映像講義を何百人、何千人もの受講生が見ます。その中には合格する人もいれば、不合格になる人もいます。不合格になった原因が講師にあるとは限りません。受講生が十分な勉強時間を確保できなかったのかもしれませんし、復習や問題演習が不足していた可能性もあります。反対に、合格したからといって、そのすべてが講師の指導力によるものとも限りません。もともと法律の勉強経験がある人もいれば、講義以外に自分で大量の問題演習をした人もいるからです。
つまり、「どれだけ多くの受講生から選ばれているか」は比較的見えやすい一方で、「その講師自身の指導力によって、受講生がどれだけ合格に近づいたのか」は外から見えにくいということです。
人気は指導力の証明にはならない
ここまでの話は、人気講師の指導力が低いという意味ではありません。通信講座の人気講師の中にも、宅建について深い知識を持ち、豊富な指導経験を積み、質の高い講義を行っている方は当然います。
ただし、その講師が人気になった理由のすべてが指導力とは限りません。人気には、容姿、経歴、肩書き、知名度、話し方、キャラクター、SNSでの発信力など、指導力以外のさまざまな要素も影響します。そのため、「人気がある」という結果だけを見て、「指導力も高いはずだ」と判断することはできません。
人気は、どの講師の授業を見るのかを決める材料として使い、その先の指導力については、実際にどのような講義をしているのかを見て判断する必要があります。
➁講師との相性と「指導力」は分けて考える
通信講座では同じ講師の講義を何十時間も見るため、指導力とは別に、自分との相性も確認する必要があります。話す速度、声、説明の順序、雑談の量など、どのような授業を受けやすいと感じるかには個人差があります。そのため、「自分がこの講師から何十時間も学び続けられるか」という相性と、「宅建に合格するために必要なことを適切に教えられるか」という指導力は分けて考えてください。相性が良いことだけで指導力が高いとは判断できず、指導力が高くても自分に合うとは限りません。
講師との相性をなぜ通信講座選びで重視するのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座の選び方|講師との相性を最優先すべき理由
③「指導力」がある講師を見抜く5つのポイント
講師の指導力を体験講義だけで完全に判断することはできません。それでも、実際の講義を見ることで、講師自身の法律に対する理解、説明する力、宅建試験の研究量など、指導力を判断するための材料を得ることはできます。
また、ここから挙げるポイントの多くは、講師本人の努力によって向上させることができます。法律の理由を調べる、過去問を分析する、初学者にも伝わる説明や具体例を考える。こうした授業研究を積み重ねた結果は、実際の講義に表れます。そのため、「なんとなく分かりやすい」という感覚だけで評価するのではなく、実際の講義で確認できる事実から、その講師が受講生を合格させるために、どこまで授業を研究しているのかを見ていきます。
特に確認してほしいのは、次の5つです。


理由まで説明しているか
宅建の講義を見るときに確認してほしいのが、結論だけではなく「なぜそうなるのか」まで説明しているかです。
宅建試験では、似たような内容でも、条件が少し変わるだけで結論が変わる知識が数多く出題されます。その結論を一つずつ丸暗記することもできますが、それでは覚えなければならない量が増えてしまいます。理由から判断できる知識については、「なぜそうなるのか」まで理解することで、暗記する量を減らし、問題の条件が変わっても考えて答えを出せるようになります。
例えば宅建では、不動産を売ったり貸したりするときに、契約前に相手へ説明しなければならない事項が決められています。これを「重要事項説明」といいます。重要事項説明の対象となるものの一つに、土地の一部を私道として使わなければならない場合などの「私道に関する負担」があります。この情報は、不動産を売買するときや土地を貸すときには説明が必要ですが、建物だけを貸すときには説明する必要がありません。結論だけを見れば、「売買は必要、土地の貸借も必要、建物の貸借は不要」と三つのパターンを覚えることになります。しかし、理由まで理解すると、これらを別々に丸暗記する必要はありません。
例えば、100㎡の土地を買ったのに、そのうち10㎡を道路として使わなければならず、予定していた建物を建てられないのであれば、土地を買う人にとって重要な情報です。土地を借りて建物を建てる人にとっても同じです。一方、すでに建っている建物を借りるだけの人は、その土地に新しく建物を建てるわけではありません。そのため、建物だけを借りる人には、この情報を契約前に説明する必要がないのです。
ここまで理由を理解できれば、「売買○・土地の貸借○・建物の貸借×」という三つの結論を、それぞれ別の知識として丸暗記する必要はありません。このように宅建には、結論だけを覚えるより、理由を理解した方が覚える量を減らせる知識があります。また、理由を理解していれば、問題の条件が少し変わっても、その理由から結論を考えられる場合があります。
そして、このような理由まで説明できるかどうかは、講師の指導力を見る材料にもなります。受講生に理由を説明するためには、まず講師自身が「なぜその結論になるのか」を理解していなければなりません。そのうえで、自分が理解している内容を、初めて宅建を勉強する人にも分かる言葉に変換して説明する力が必要です。
だからこそ体験講義では、「ここは試験に出るので覚えてください」で終わっていないか、それとも、なぜその結論になるのかまで論理的に説明しているかを確認してみてください。「なんとなく説明が分かりやすかった」という感覚ではなく、結論と理由がつながっていて、その理由を自分でも説明できる状態になったかを見ることで、講師自身の法律に対する理解と説明力の一部を確認できます。
テキストに書いてあることを説明して終わっていないか
通信講座では通常、講義と一緒にテキストを使います。テキストには、宅建試験で学ぶ知識や法律上の結論が掲載されています。そのため、講師がテキストに書いてある内容をそのまま説明するだけであれば、受講生は「テキストに何が書いてあるのか」は分かっても、その知識を本試験で使えるところまで理解できるとは限りません。
宅建試験では、テキストに書かれている文章がそのまま出題されるわけではありません。問題文の事例や条件を読んで、学んだ知識を使って○か×かを判断する必要があります。だからこそ講師には、テキストに書かれている結論を説明するだけではなく、この制度はそもそも何のためにあるのか、なぜこの場合だけ扱いが違うのか、似ている制度と何が違うのか、受験生がどこを間違えやすいのか、本試験ではどのような形で問われるのかといったところまで補ってもらう価値があります。
テキストに書かれている内容を分かりやすい言葉に言い換えるだけであれば、講師自身がその論点についてどこまで深く理解しているのかは見えにくいところがあります。一方、制度の理由や似た知識との違い、間違えやすいポイント、本試験での問われ方まで説明するためには、テキストに書かれている内容より広い知識と、試験問題とのつながりを理解している必要があります。
もちろん、難しい法律の文章を初学者にも分かりやすい言葉に言い換えることにも価値があります。しかし、そこで終わっている講義と、テキストだけでは分からない理由や知識同士のつながり、本試験での使い方まで説明している講義では、確認できる講師の能力も違います。体験講義を見るときには、「説明が分かりやすかった」という感覚だけで終わらせず、その講師の説明によって、テキストを一人で読んだだけでは分からなかった何が分かるようになったのかを確認してみてください。
何でも語呂合わせで覚えさせていないか
宅建には、最終的に覚えなければならない知識もあります。しかし、すべての知識を同じように丸暗記する必要があるわけではありません。ここで重要なのは、その知識が本当に丸暗記しなければならないものなのか、それとも理由を理解すれば判断できるものなのかです。
理由から判断できる知識まで語呂合わせや覚え歌に置き換えてしまえば、その場では覚えやすく感じても、本来は理解することで覚える必要がなくなる部分まで、新たな暗記事項になってしまいます。また、覚えた組み合わせそのものを問われれば答えられても、条件や聞かれ方が変わったときに対応しにくくなることがあります。
さらに、語呂合わせをどのように使っているかは、講師自身の知識の深さや説明力を見る材料にもなります。理由から判断できる知識を理由から説明するためには、まず講師自身が制度や法律を理解し、「なぜその結論になるのか」を説明できなければなりません。さらに、その理由を初学者にも理解できる言葉や具体例に置き換える説明力も必要です。
反対に、理由から説明できる知識まで「この語呂合わせで覚えてください」で済ませているのであれば、その講師が制度の理由を十分に理解しているのか、あるいは理解していても初学者に伝えられるだけの説明力があるのかを慎重に見る必要があります。
語呂合わせを使うこと自体が問題なのではありません。理由を考えても結論を導けず、そのまま覚えるしかない知識であれば、覚えるための手段として使うこともできます。重要なのは、理由から理解できる知識と、そのまま覚えるしかない知識を講師自身が区別できているかです。体験講義では、語呂合わせの数や覚えやすさだけではなく、本来は理由から理解できる知識を講師が論理的に説明できているかを確認してみてください。そこから、講師の知識の深さと説明力の一部を見ることができます。
出題頻度や知識の優先順位を示しているか
宅建試験の目的は、50問すべてに正解することではありません。合格点を取ることです。一方、宅建のテキストには大量の知識が掲載されています。何度も繰り返し出題される論点もあれば、現在もテキストには掲載されているものの、長期間まったく出題されていない論点もあります。限られた勉強時間の中ですべての知識を同じ深さまで勉強しようとすれば、本来確実に得点したい重要な論点に使える時間まで減ってしまいます。そのため、宅建に合格するには、何を優先して勉強し、何の優先順位を下げるのかという判断が必要です。
そこで確認したいのが、講師が知識の優先順位をどの程度具体的に示しているかです。「ここは重要です」「ここはあまり出ません」と言うだけなら簡単です。重要なのは、その判断の根拠まで具体的に示しているかです。例えば、「この論点は過去15年間で10回出題されています」「この論点は令和に入ってから一度も出題されていません」というように、対象となる期間と実際の出題回数まで示しているかを見てください。
「よく出る」「あまり出ない」だけでは、それが過去問の分析に基づいた判断なのか、講師自身の感覚なのかを受講生側から区別できません。期間と回数まで示されていれば、少なくとも出題頻度については、過去問という客観的な根拠をもとに説明していることを確認できます。これは、受講生が勉強の優先順位を判断するためだけの話ではありません。講師が宅建試験そのものをどこまで研究しているのかを見る材料にもなります。試験対策として「ここは重要です」と教えるのであれば、その判断には根拠が必要です。過去問を継続的に分析している講師であれば、「よく出ます」「あまり出ません」という感覚的な説明だけではなく、対象となる期間や出題回数など、重要度を判断した根拠を具体的に説明できます。
もちろん、すべての論点について授業中に出題回数を読み上げる必要はありません。また、出題回数だけで重要度がすべて決まるわけでもありません。その論点の内容や他の知識との関係、理解することで別の問題にも応用できるかなども踏まえて、どこまで勉強する必要があるのかを判断する必要があります。
同じ論点の中でも、合格するために確実に身につけたい部分と、限られた時間の中では優先順位を下げてもよい細かな部分があります。試験対策講師には、知識を説明するだけではなく、合格点を取るために、限られた勉強時間をどこに使い、どこには使わないのかを判断する力も必要です。体験講義では、「ここは重要です」という言葉そのものではなく、なぜ重要なのかを客観的な根拠から説明できているかを確認してみてください。そこを見ることで、講師が宅建試験をどこまで研究し、その研究を実際の授業に反映しているのかを判断する材料になります。
具体例が制度の理解につながっているか
法律を初めて勉強する人にとって、テキストに書かれた抽象的な説明だけで制度の内容を理解することは簡単ではありません。そのため、具体例を使って説明することには大きな意味があります。ただし、具体例は多ければ多いほど良いわけではありません。宅建試験で必要なのは、講義で聞いた具体例そのものを覚えることではなく、その具体例を通して法律の考え方を理解し、別の問題でも使えるようになることです。
例えば、具体例を聞いて「このケースでは○になる」と分かったとしても、その具体例と少し条件が違うだけで判断できなくなるのであれば、その事例の結論を一つ覚えただけになっている可能性があります。一方、具体例を通して「なぜこの場合は○になるのか」「どの条件が結論を分けているのか」まで理解できれば、条件が変わった別の問題でも、その考え方を使って判断できるようになります。
具体例の使い方からは、講師の説明力も見ることができます。制度を正確に理解したうえで、その本質を崩さずに初学者でもイメージできる具体的な場面へ置き換えるには、単に法律知識を持っているだけでは足りません。どの部分が理解しにくいのかを考え、その理解に必要な情報を具体例として提示する力が必要です。
面白い話や印象に残る話を聞いて「授業が楽しかった」と感じることと、その具体例によって法律を理解できたことは同じではありません。具体例は、授業を面白くするためだけではなく、抽象的な法律を具体的な場面に置き換え、そこから法律上の判断基準を理解するために使われる必要があります。体験講義を見るときには、具体例の数や面白さではなく、その具体例によって「なぜその結論になるのか」が論理的に理解でき、条件が変わった別の問題にも同じ考え方を使えるようになったかを確認してみてください。そこを見ることで、講師が法律を理解しているだけでなく、その理解を受講生に伝える説明力まで持っているのかを判断する材料になります。
④最後は実際の体験講義で判断する
ここまで挙げたポイントを確認するためにも、最後はYouTubeや無料体験講義を実際に見て判断してください。講師のプロフィールや人気、口コミだけを見ても、その講師が実際にどのような説明をしているのかまでは分かりません。また、「分かりやすかった」「面白かった」という感覚だけでは、なぜその講師を高く評価したのかを説明できません。
理由まで説明しているのか。テキストを読んだだけでは分からない何を付け加えているのか。理由から理解できる知識まで語呂合わせにしていないか。重要度を客観的な根拠から説明しているか。具体例が別の問題にも使える理解につながっているか。このように、実際の講義で確認できる事実を一つずつ見ていけば、「なんとなく分かりやすい」という感覚だけではなく、講師の法律に対する理解、説明力、宅建試験の研究量などを具体的に考えることができます。
同時に、「この講師の授業を何十時間も受け続けられそうか」「この説明の仕方で自分は理解できそうか」という相性も確認してください。人気や口コミは、「誰の授業を見るか」を決めるために使う。その後、「誰から教わるか」は実際の授業を見て決める。この順番で考えれば、人気だけを根拠に講師を選ぶことを避けられます。
体験講義で確認できる指導力は限界がある
ただし、体験講義を10分、20分見ただけで、その講師の指導力を完全に見抜くことはできません。講座全体を通して説明の質が維持されているか、学習が進んだ後の難しい論点をどのように説明するのかなど、実際に受講しなければ分からないこともあります。
また、ここまで挙げた5つのポイントだけで講師の指導力のすべてが決まるわけでもありません。体験講義で確認できるのは、指導力の中でも外から観察しやすい一部分です。それでも、人気や知名度、口コミだけを見て講師を決めるより、判断できることは増えます。体験講義だけで「この講師は指導力が高い」と断定するのではなく、実際の講義から確認できる事実をもとに、その講師の能力をできる限り具体的に判断するために使ってください。
⑤まとめ|感覚ではなく実際の講義から「指導力」を判断する
通信講座では、指導力だけでなく「この講師から習いたい」と思ってもらう「売れる力」も人気に影響します。そのため、人気があるという事実だけから、その講師の指導力まで判断することはできません。
だからこそ、実際の講義を見てください。重要なのは、「なんとなく分かりやすい」「人気があるから安心できそう」といった感覚だけで判断するのではなく、講義のどこを見て、その講師の何を評価するのかを明確にすることです。理由の説明や語呂合わせの使い方からは、法律に対する理解や説明力を見ることができます。出題頻度や優先順位の根拠からは、宅建試験をどこまで研究しているのかが見えてきます。具体例の使い方からは、法律を初学者にも理解できる形に変換する説明力を見ることができます。
「分かりやすそう」という感覚だけではなく、「なぜこの講師を選ぶのか」を自分で説明できるところまで実際の講義を見る。それが、通信講座で講師の「指導力」を判断するうえで重要です。
