
宅建試験の勉強方法として、通信講座は非常に便利です。通学する必要がなく、自分の好きな時間に講義を見ることができ、1対1の個別指導と比べて費用も抑えやすいというメリットがあります。実際、通信講座だけで宅建試験に合格する方もたくさんいます。
一方で、通信講座には、講師の指導力や教材の質とは関係なく、映像授業という形式だからこそ難しいこともあります。
通信講座で勉強していると、「講義は分かりやすいのに問題が解けない」「質問サービスも使っているのに点数が伸びない」「何が悪いのか自分でも分からない」という状態になることがあります。これは、単純に通信講座の講師の説明が悪いからとは限りません。
この記事では、宅建の通信講座には構造上どのような限界があるのかを、1対1の個別指導を行っている立場から解説します。
<目次>
①通信講座の構造上の弱点
通信講座では全員が同じ映像授業を受ける
通信講座の映像授業は、多くの受講生に同じ講義を提供することを前提として作られています。しかし、同じ宅建受験生でも、それまでの学習経験や得意不得意はまったく違います。
・初めて宅建を勉強する人
・一度受験した経験がある人
・民法が得意な人
・宅建業法が苦手な人
・法律そのものを初めて勉強する人
本来であれば、それぞれ必要な説明の量や時間は違います。
ある受講生にとっては十分な説明でも、別の受講生にとっては説明不足になることがあります。反対に、すでに理解している内容であっても、講義そのものの内容や時間配分が、その受講生に合わせて変わるわけではありません。映像授業では、一人ひとりの理解度や学習経験に合わせて、講義そのものを変更することはできません。
多くの受講生に同じ授業を届けられることは通信講座の大きなメリットですが、その反面、一人の受講生だけに合わせて授業内容を変えることは難しくなります。
生徒の反応を見ながら説明を変えられない
映像授業では、講師は実際に講義を見ている受講生の反応を見ることができません。
受講生が、「ここまでは分かっている」「この言葉の意味から分からない」「説明自体は分かったけれど、似た内容との違いが分からない」という状態であっても、その場で講師が気づいて説明方法を変えることはできません。
同じ内容でも、理解しやすい説明方法は人によって違います。ある人には具体例を使った方が分かりやすく、別の人には法律の理由から説明した方が理解しやすいこともあります。また、今説明している内容ではなく、その前提となる知識まで戻らなければ理解できない場合もあります。
映像授業では、こうした受講生一人ひとりの反応に合わせて、その場で説明する言葉や具体例、説明する順番を変更することはできません。
問題を「どう考えて解くのか」まで学びにくい
通信講座で特に差が出やすいのが、問題演習です。通信講座では、講義で知識を学んだ後、問題演習は受講生自身で進める形式が一般的です。
講義で知識を学ぶ
↓
受講生が自分で問題を解く
↓
問題集の解説を読む
問題集の解説を読めば、正解やその根拠を確認することはできます。しかし、問題の答えや根拠を確認することと、初見の問題をどのように考えて解くのかを授業で教わることは別です。宅建の問題を解くときには、単に知識を思い出せばよいわけではありません。


例えば、ある肢について〇か×かを判断する場合でも、
「この問題では何が聞かれているのか」
「どの法律が関係しているのか」
「その法律はなぜそのような内容になっているのか」
「判断するために必要な要件は何か」
「問題文のどの事実をその要件に当てはめるのか」
「その結果、なぜ〇になるのか、なぜ×になるのか」
という順番で考える必要があります。
問題演習を受講生自身で進める形式では、一人ひとりの考え方を見ながら、
「まずどこを見るのか」
「次に何を考えるのか」
「なぜこの知識を使うのか」
「問題文のどこを法律の要件に当てはめるのか」
という思考の流れを何度も一緒に練習することはできません。
その結果、講義を聞けば内容は分かるのに、自分で問題を解こうとすると、何から考えればよいのか分からないという状態になることがあります。
宅建では、法律の結論を知っているだけではなく、その問題で何を考え、どの知識を使い、問題文の事実をどう当てはめるのかまで身につける必要があります。
過去問を使った具体的な勉強方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
【宅建】分野別過去問題集の正しいやり方|何周する?伸びる解き方を解説
【宅建】年度別過去問題集はいつから始める?予想問題集はやるべき?
問題を解く過程を講師が見れない
映像授業では、講師が受講生の問題を解く過程を見ることはできません。問題演習では、正解したか不正解だったかだけでは、その人が本当に理解できているかは分かりません。
正解していても、
・理由が分からず勘で選んだ
・過去に見た問題と似ていたから選んだ
・本来とは違う理由で〇×を判断した
ということがあります。
反対に、不正解でも、考え方の大部分は合っていて、一つの知識だけが不足している場合もあります。
問題集の解説は、一人ひとりがどのように考えて答えを出したのかに合わせて作られているわけではありません。そのため、正解した問題については「理解できている」と判断してしまい、実際には考え方が不安定なまま先へ進んでしまうこともあります。
不正解だった場合でも、「知識不足なのか」「問題文の読み違いなのか」「使う知識を間違えたのか」まで、自分だけで正確に判断するのは簡単ではありません。
前提知識が抜けていても講師が気づけない
宅建では、ある内容を理解するために、その前提となる知識が必要になることがあります。
講師の説明そのものは分かりやすくても、受講生がその前提となる言葉や法律の考え方を理解していなければ、内容を十分に理解できないことがあります。例えば、今学んでいる論点自体が難しいのではなく、その前に出てきた基本的な法律用語や考え方が曖昧なことが原因になっている場合もあります。しかし、映像授業では、講師側からその不足を発見することができません。
受講生自身が「自分はどこから分かっていないのか」に気づかなければ、原因が分からないまま同じ講義を見直したり、理解が不十分なまま次の講義へ進んだりすることになります。
自分が分からないことは認識できても、「なぜ分からないのか」まで自分で判断するのは難しいことがあります。
生徒ごとに「この問題はやらなくていい」と判断できない
宅建試験では、すべての問題を解けるようにする必要はありません。50問すべて正解することではなく、合格点を取ることが目的です。そのため、限られた勉強時間の中では、どの問題まで取りにいくのかという判断も重要になります。
映像講義でも、「これは発展問題なので、余裕がある方だけ取り組んでください」と全体に伝えることはできます。しかし、目の前の一人の受講生について、「今のあなたはこの問題をやるべきです」「今はこの問題に時間を使う必要はありません」と個別に判断することはできません。
例えば、難易度の高い発展問題があったとしても、基本問題がまだ不安定な受講生であれば、その問題に時間を使うより、頻出の基本問題を確実に取れる状態にした方がよいことがあります。反対に、基本問題を安定して取れていて、さらに点数を伸ばしたい受講生であれば、発展的な問題まで取り組む価値があります。同じ問題でも、ある受講生には必要で、別の受講生には合格点を取るうえで優先度が低いということがあります。
通信講座では、最終的にどの問題まで取り組むのかは、受講生自身が判断することになります。
質問サービスだけでは理解不足を拾えない
通信講座の中には、質問サービスを利用できるものもあります。分からない部分について質問できること自体は大きなメリットです。
ただし、質問サービスを利用するためには、まず受講生自身が「自分はここが分からない」と認識する必要があります。しかし、実際には、自分では理解できていると思っていても、問題を解いてみると理解が不十分だったということがあります。本人が理解不足に気づいていなければ、その部分について質問することもありません。
また、通信講座によっては、質問してから回答を受け取るまで数日かかることもあります。さらに、映像講義を担当した講師本人が回答するとは限りません。そして、仮にすぐに正しい回答をもらえたとしても、一つの質問に対する回答だけでは、理解不足の原因まで分からないことがあります。
例えば、「なぜこの問題は×なのですか」と質問して、「〇〇法では△△と定められているためです」という正しい回答を受け取ったとします。それで疑問が解消する人もいます。
しかし、本当に必要なのが、
「そもそもこの法律は何のためにあるのか」
「この問題ではどの要件を見る必要があるのか」
「問題文のどの部分がその要件に当たるのか」
「条件が一つ変わったら結論はどう変わるのか」
というところまでの理解であれば、一つの質問に対する回答だけでは足りないことがあります。
質問サービスは便利ですが、本人が認識している疑問に答えてもらうことと、理解不足そのものを講師側から発見してもらうことは別です。
勉強方法が間違っていても気づきにくい
通信講座では、受講生の普段の勉強方法や問題の解き方を講師が継続的に見ているわけではありません。そのため、点数が伸びない原因が勉強方法そのものにあっても、その問題に気づきにくいという弱点があります。
通信講座の質問サービスでは、「この法律の意味が分かりません」「この問題の答えがなぜ×なのか分かりません」といった個別の疑問について質問できます。
しかし、点数が伸びない原因が、その一問や一つの法律にあるとは限りません。例えば、
「講義の見方そのものが間違っている」
「過去問の復習方法が合っていない」
「理解できていないのに講義だけ先へ進めている」
「細かい知識に時間を使いすぎている」
「問題を解くときに結論だけ思い出そうとしている」
といった勉強方法そのものに問題がある場合があります。
ここで難しいのは、本人がその問題に気づいていなければ、質問サービスを利用しても根本的な原因の解決にはつながりにくいことです。
例えば、ある問題について「なぜこの答えになるのか」と質問して疑問が解消したとしても、そもそもの原因が過去問の復習方法や問題を解くときの考え方にあるのであれば、同じようなつまずきを繰り返す可能性があります。一つひとつの疑問を解消することと、点数が伸びない原因そのものを見つけることは別です。
決められたカリキュラムを進めるだけでは合格につながらない理由については、以下の記事でも詳しく解説しています。
宅建試験でカリキュラム通り勉強しても合格できない理由
学習内容を生徒に合わせて変えられない
通信講座には、あらかじめ学習する順番やスケジュールが用意されているものもあります。自分で一から勉強計画を作る必要がないことは、大きなメリットです。
ただし、実際に勉強を始めると、最初の予定通りに進むとは限りません。想定以上に時間がかかる分野が出ることもあれば、反対に、短時間で理解できる分野もあります。仕事や学校が忙しくなり、勉強できる時間そのものが減ることもあります。通信講座でも、自分で予定を変更することはできます。
ただし、何を削ってよいのか、どこには時間をかけるべきなのかを判断するのは受講生自身です。例えば、予定より1か月遅れてしまった場合、単純にその後の予定を1か月ずらせばよいとは限りません。試験日は変わらないため、残された期間の中で、どこに時間を使い、どこを短くし、どの問題を後回しにするのかを決める必要があります。
自分の理解度や残り期間を正確に判断して学習内容まで変更できる人にとっては問題ありません。一方で、それが難しい場合には、最初に決められた予定から遅れた後に立て直せなくなることがあります。
➁通信講座が悪い勉強方法というわけではない
ここまで、通信講座の映像授業という形式では難しいことを説明してきました。ただし、通信講座自体が悪い勉強方法というわけではありません。
通信講座には、
・個別指導より費用を抑えやすい
・好きな時間に勉強できる
・講義を何度でも見ることができる
・自分のペースで進められる
といった大きなメリットがあります。
講義で学んだ内容を自分で理解し、必要な問題演習を行い、間違えた原因を自分で判断し、勉強方法まで修正できる方であれば、通信講座だけでも十分に宅建試験の合格を目指せます。
特に、自分で学習状況を判断して、必要に応じて復習量や問題演習、勉強時間の使い方まで変更できる方にとっては、通信講座は費用を抑えながら自分のペースで学べる効率のよい方法です。
一方で、
講義を見ても理解できない部分が残る。
問題をどう考えて解けばよいのか分からない。
自分がどこでつまずいているのか分からない。
何を優先すればよいのか判断できない。
質問して疑問は解消しているのに、なかなか点数につながらない。
そもそも現在の勉強方法が合っているのか分からない。
という方の場合には、通信講座の自由度の高さや、一方向の映像授業という形式が弱点になることがあります。
③個別指導なら通信講座の弱点を補える
ここまで説明してきた通信講座の弱点は、1対1の個別指導であればまとめて補うことができます。


1対1の個別指導では、全員に同じ授業を行うのではなく、生徒の現在の理解度や学習状況を見ながら授業内容を変えられます。理解できている部分については短時間で進め、理解が不十分な部分については、必要に応じて前提知識まで戻って説明します。生徒の返答や反応を見ながら、説明する言葉や具体例を変えることもできます。
また、授業中に分からないことがあれば、その場ですぐに講師へ質問できます。質問した内容についてさらに理解できていない部分があれば、やり取りを重ねながら必要なところまで説明を受けられます。
問題演習では、単に答え合わせをするだけではありません。「何を聞かれているのか」「どの法律を使うのか」「なぜその法律を使うのか」「問題文のどの事実をどの要件に当てはめるのか」「なぜ〇または×になるのか」という考え方まで確認しながら進めます。
さらに、正解・不正解だけを見るのではなく、なぜその答えを選んだのか、どの知識を使おうとしたのかまで確認することで、本人が気づいていない理解不足や考え方の問題を見つけることもできます。
問題の優先順位についても、すべての生徒に同じ問題を解かせる必要はありません。現在の実力や残りの勉強時間を見て、今取り組むべき問題と、今は時間を使わなくてよい問題を判断できます。
また、授業内容だけではなく、普段の問題演習や復習方法、宿題の量や内容についても、生徒の学習状況に合わせて変更できます。最初に作った予定をそのまま進めるのではなく、実際の理解度や進み具合を見ながら、その時点で合格するために必要な学習内容へ変えていけることが、1対1の個別指導の大きな特徴です。
通信講座の代わりにすべてを個別指導へ変更する必要もありません。
すでに通信講座を利用している場合でも、映像講義はそのまま利用しながら、通信講座だけでは不足している部分を個別指導で補うこともできます。
④まとめ
宅建の通信講座には、費用を抑えやすく、自分の好きな時間に勉強できるという大きなメリットがあります。
一方で、映像授業という形式上、
・一人ひとりの理解度に合わせて講義内容を変える
・受講生の反応を見ながら説明方法を変える
・問題をどう考えて解くのかを一問ずつ一緒に練習する
・受講生が問題を解く過程を見る
・前提知識の不足を講師側から発見する
・受講生ごとに問題を取捨選択する
・本人が気づいていない理解不足を講師側から発見する
・勉強方法そのものの問題を見つける
・学習状況に合わせて学習内容を変更する
といったことは難しくなります。
これは、講師の指導力や教材の質とは別の問題です。自分で理解度を判断し、必要な復習や問題演習を行い、勉強方法まで修正できる方であれば、通信講座は非常に効率のよい選択肢です。
一方で、講義についていけない、問題の解き方が分からない、自分が何を間違えているのか分からないという場合には、一方向の映像授業という形式が自分に合っているのかを考える必要があります。
通信講座を受講しているのに点数が伸びない原因については、以下の記事でも詳しく解説しています。
宅建の通信講座で合格できないのはなぜ?ついていけない原因と対策
⑤通信講座で伸び悩んでいる方へ
宅建オンライン家庭教師では、すでに通信講座を受講している方でも、個別指導をご利用いただけます。通信講座をやめることを前提にする必要もありません。
無料体験授業では、現在使っている教材や勉強状況を確認し、講義内容をどこまで理解できているのか、実際の問題をどのように考えて解いているのかを見ます。
そのうえで、必要な部分だけを指導すればよいのか、一度基礎まで戻った方がよいのか、現在の問題演習や復習方法を変えた方がよいのか、今後どの分野を優先して勉強するべきなのかをご提案します。
授業を始めた後は、生徒の理解度や問題を解くときの考え方、学習の進み具合に合わせて、授業内容や宿題を変更しながら必要な指導を行います。
通信講座を受講しているのに点数が伸びない、途中からついていけなくなった、一人では何を変えればよいのか分からないという方は、一度無料体験授業をご検討ください。
