
宅建の通信講座を選ぼうとすると、合格率、料金、教材、質問制度、サポート内容など、さまざまな比較項目が出てきます。しかし、私が通信講座を選ぶのであれば、こうした項目の多くは講座選びの中心には置きません。講座選びはほぼ講師で決めます。
もちろん、料金や教材などを確認する必要はあります。それでも、一般的な通信講座の比較記事とは、各項目の重要度に対する考え方がかなり違います。なぜほぼ講師で決めるのか。合格率、料金、教材、質問制度などをどのように考えているのかも含めて、宅建の通信講座の選び方を解説します。
<目次>
①通信講座は最初から大手に絞る
宅建の通信講座を選ぶなら、最初から大手予備校・大手通信講座に候補を絞ります。大手は長年にわたり、多くの受講生に宅建講座を提供してきました。各社で教材やカリキュラム、学習システムなどに違いはありますが、長年にわたって宅建講座を提供している大手であれば、教材やカリキュラムは一定以上の水準にあると考えていいでしょう。教材の内容が明らかに不足している、重要な知識が抜けている、誤りが多い、カリキュラムが試験対策として成立していないといった大きな問題まで心配する必要はありません。
一方、小規模な講座や個人運営の講座まで候補に入れるなら、講師だけを見て決めるわけにはいきません。講師本人の授業は分かりやすくても、教材やカリキュラムまで一定以上の水準にあるとは限らないからです。誤字脱字や誤った記載が多い、講師個人の考え方に偏った教材になっている、レイアウトに癖があって使いにくいといった可能性もあります。また、運営面での信用度や、申し込んだ講座が今後も安定して提供されるのかまで考える必要があります。
もちろん、小規模・個人だから必ず質が低いという話ではありません。ただ、大手に所属している宅建講師だけでも十分な人数がいます。それなら、わざわざ小規模・個人まで候補を広げて、講師以外の部分まで一つひとつ心配する必要はないと考えています。講師以外を軽視しているから大手を選ぶのではありません。講師以外で大きく外す可能性を減らしたうえで、講師を中心に選びたいから大手に絞ります。
➁通信講座を選ぶときに重視しなくていいポイント
大手の通信講座に候補を絞ったら、合格率や料金、教材、質問制度など、一般的な比較記事で重視されている項目についても確認します。ただし、私はこれらを講師ほど重要な判断材料にはしません。なぜ講師以外の要素をそこまで気にしなくていいと考えているのか、それぞれ見ていきます。


総合ランキング
通信講座の比較記事でよく見かける「総合ランキング」は、ほとんど参考にしません。教材、料金、合格率、質問制度、サポート内容、オンライン対応、校舎数などに◎、○、△、×を付け、その評価をもとに各社を順位付けしている記事があります。しかし、そこで評価されている項目が、自分にとって重要とは限りません。
質問を一度も使わない人にとって「質問回数無制限」は大きなメリットではありません。オンラインでしか受講しない人なら、全国に何十校の校舎があってもほとんど関係ありません。それらまで加点して「総合1位」と言われても、その講座が自分にとって一番良いとは限りません。
さらに気になるのが、肝心の講師をほとんど評価しないまま、予備校単位で順位を付けている比較記事が多いことです。教材○、質問対応◎、サポート△、校舎×などと細かく採点する一方で、講師については「人気講師が担当」「分かりやすいと評判」と紹介する程度。それで通信講座全体の順位を決めても、私はあまり参考にしません。
通信講座では、同じ講師の講義を何十時間も見ることになります。だからこそ、どの予備校を選ぶかだけでなく、誰から教わるのかが非常に重要です。しかも、最初から大手に候補を絞っているのであれば、教材やカリキュラムに致命的な問題がないかまで心配する必要はありません。大手同士の細かな違いを◎、○、△、×で採点するより、誰の授業を何十時間も受けるのかを見るほうが、講座選びでははるかに重要だと考えています。
合格率
通信講座では、「合格率○%」「全国平均の○倍」といった数字が大きく掲載されていることがあります。しかし、私は合格率だけで講座を選ぶことはありません。
資格講座の合格率は、誰を対象に計算するかによって数字が大きく変わります。講座申込者全員を母数にするのか、本試験受験者や合否確認者、カリキュラム修了者だけを対象にするのかによって、同じ講座でも合格率は変わります。また、受講生それぞれの条件も同じではありません。もともとの実力、勉強時間、学習期間などが違う以上、合格率が高いからといって、その講座自体が優れているとは限りません。
以上の理由から、合格率だけで講座の優劣を判断することはできません。私は合格率を講座選びの決め手にはしません。通信講座の合格率については、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座を合格率だけで絶対に選んではいけない理由
数万円の料金差
料金は、まず自分が無理なく支払える金額かどうかを確認します。その範囲内であれば、数万円の価格差だけで講座を決めることはありません。
たとえば、2万円の講座と10万円の講座があり、10万円の講座の講師のほうが圧倒的に自分に合っているのであれば、私は10万円の講座を選びます。8万円安いという理由だけで、自分に合わない講師の授業を何十時間も受けようとは思いません。もちろん、30万円、40万円と価格が大きく変わるなら話は別です。受験に使える予算も人によって違うので、高い講座ほど良いという意味でもありません。無理なく支払える範囲の数万円の差なら、安さより講師を優先します。
教材の細かな違い
通信講座を選ぶときは、教材のサンプルも確認します。教材は意外と好みが分かれるため、文字の量や図表、色使い、レイアウトなどを見て、自分にとって使いやすいかは確認しておいたほうがいいでしょう。
ただ、大手の通信講座から選ぶのであれば、教材を何社も細かく比較する必要はないと考えています。長年、宅建講座を提供している大手であれば、合格に必要な知識が大幅に抜けているなど、教材の内容そのものに大きな問題があることはほとんどないからです。そのため、私なら教材のサンプルを見て、「これは使いにくくて無理」と感じなければ、それ以上はあまり気にしません。フルカラーか、図表がどれだけ多いか、説明がどれだけ詳しいかといった細かな違いより、講師を重視します。
小規模・個人まで候補にすると、教材の内容や質まで判断材料にしなければならなくなります。しかし、初めて宅建を勉強する人が、教材に必要な知識が十分に含まれているか、内容が正確かまで判断するのは簡単ではありません。これも、私が最初から大手に候補を絞る理由の一つです。
質問制度やサポート
質問制度やサポートも、私は講座選びではほとんど重視しません。通信講座では、「質問回数無制限」「メールで質問可能」「○時間以内に回答」といった質問制度や対応の早さをメリットとしていることがあります。しかし、質問できることや回答が早いことと、その疑問がきちんと解消されることは別です。
私は普段、宅建のオンライン個別指導をしているため、通信講座を利用した経験のある生徒を指導することもあります。その中で、分からないところを通信講座に質問しても、数日後に「この法律ではこのように決められています」といった回答が返ってくるだけで、結局なぜそうなるのかまでは理解できなかったという話を聞くことがあります。しかし、「法律でこのように決められている」という結論だけであれば、テキストを読めば分かります。受講生がわざわざ質問しているのは、その結論を読んでも理解できなかったからです。それに対してテキストに書かれている内容とほとんど変わらない回答が返ってきても、疑問を解消できないことがあります。
もちろん、すべての通信講座の質問対応がこのようなものだという意味ではありません。ただ、メールや質問フォームを使ったやり取りでは、受講生がどこで理解できていないのか、どの前提知識が抜けているのかまで把握したうえで、その場で説明を変えながら教えることには限界があります。一度回答して終わりではなく、「ここまでは分かりますか」「では、なぜこの場合は違うと思いますか」とやり取りしながら、理解できていない原因まで探る必要があることもあります。
回答の早さについても同じです。同じ内容の回答が返ってくるのであれば、遅いより早いほうがいいでしょう。しかし、数時間で回答が返ってきても、テキストや条文に書かれている内容を言い換えただけで、なぜそうなるのかが理解できなければ、返信が早いことに大きな意味はありません。
質問対応は「何時間で返信されたか」ではなく、「その回答で疑問が解消されたか」で評価すべきです。どれだけ返信が早くても疑問が解消されないのであれば、私にとってその質問制度を講座選びで高く評価する理由にはなりません。そのため、「質問回数無制限」「回答が早い」といった特徴だけで通信講座の評価を上げることはありません。質問できる回数や返信までの時間より、その質問によって分からないことを解決できるかのほうが重要だからです。
③通信講座は講師を中心に選ぶ
大手に候補を絞り、合格率や料金、教材、質問制度などを必要以上に重視しないのであれば、講座選びで見るべきものはかなり絞られます。そこで最も重視するのが、実際に何十時間も講義を受けることになる講師です。講師については、口コミや評判で候補を絞ったうえで、YouTubeや無料体験講義を見て判断します。


講師の口コミは候補を絞るために使う
講師個人についての口コミや評判は、候補を絞るために使います。大手に所属している宅建講師だけでも人数が多いため、全員の講義を最初から確認するのは大変です。予備校の公式サイトで「看板講師」「人気講師」と紹介されていても、それだけでは判断しません。看板講師だからといって万人に合うわけではなく、自分にとって分かりやすいとも限らないからです。実際、看板講師として紹介されている講師でも、「授業が分かりにくい」という口コミはあります。
そこで、まず口コミや評判を調べて、評価の高い講師を5人程度まで候補にします。その5人のYouTubeや無料体験講義を実際に見て比較します。5人とも微妙なら、さらに候補を広げて同じように見ていけばいいでしょう。ただし、口コミだけで最終的に講師を決めることはありません。「説明が丁寧」「講義のテンポが速い」「具体例が多い」といった口コミは、どの講師を見るかを決める材料になります。一方、「分かりやすい」「話し方が好き」といった評価には、その人の好みも含まれています。口コミで絶賛されている講師でも、自分が実際に見て分かりにくいと感じることはあります。反対に、それほど目立っていない講師が自分には非常に分かりやすいこともあります。
口コミは「誰の授業を見るか」を決めるために使い、「誰から教わるか」は実際の授業を見て決めます。
YouTubeや無料体験講義は必ず見る
口コミで候補を絞ったら、YouTubeや公式サイトの無料体験講義を見ます。1人につき10分、20分でも構いません。何人か続けて見れば、説明の仕方や話すスピード、授業の雰囲気がかなり違うことが分かります。
合格率70%という数字を何分眺めても、自分と講師の相性は分かりません。実際の講義を10分、20分見たほうが、自分に合う講師かどうかははるかに判断しやすくなります。また、有名講師だから、SNSで人気だから、難関資格をいくつも持っているからといった理由だけで選ぶこともおすすめしません。難関資格を持っていることから、その講師自身に高い知識や学力があることは分かるかもしれません。しかし、その講師自身に高い知識や学力があることと、初めて宅建を勉強する人に分かりやすく教えられることは、まったく別の話です。見た目についても同じです。映像講義なので最低限の見やすさは必要ですが、見た目の印象が良いことと、授業が分かりやすいことは関係ありません。
講師選びは人気投票ではありません。知名度や肩書きではなく、実際の講義を見て判断してください。
講師は「分かりやすさ」と「相性」で選ぶ
実際の講義を見るときは、自分にとって分かりやすいか、何十時間もその講師の授業を受けられるかを確認します。
自分にとって分かりやすいか
無料体験講義を見るときに、「有名な講師だから分かりやすいはず」と考える必要はありません。同じ内容を説明していても、言葉の選び方、具体例の使い方、説明の順番などは講師によって違います。ある講師の説明ではよく分からなかった内容が、別の講師の説明を聞いたらすぐに理解できることもあります。重要なのは、世間一般で「分かりやすい講師」と評価されているかではなく、自分がその講師の説明を聞いて分かりやすいと感じるかです。
何十時間もその講師の授業を受けられるか
もう一つ確認したいのが、自分との相性です。かなり単純に言えば、その講師を生理的に受け付けられるかどうかです。声、話し方、テンポ、抑揚、テンション、表情など、講師によって授業の印象はかなり違います。世間では非常に評判の良い講師でも、「この話し方はどうしても苦手」「このテンションの授業を何十時間も見るのはつらい」と感じることはあります。
通信講座では、同じ講師の授業を何十時間も見ることになります。10分、20分の無料講義ですでに生理的に合わないと感じるなら、無理にその講師を選ぶ必要はありません。反対に、説明が分かりやすく、話し方やテンポも自分に合っていて、「この人の授業なら続けて見られる」と感じるのであれば、その講師は有力な候補になります。自分にとって分かりやすいか。そして、何十時間もその講師の授業を受けられるか。まずは無料体験講義で、この2つを確認してください。
④自分で勉強を進められる人には通信講座をおすすめする
ここまで講師を中心に通信講座の選び方を説明してきましたが、通信講座そのものについてはかなり肯定的に考えています。私自身、もし今から別の法律系資格を受験するのであれば、間違いなく通信講座を利用します。
学習計画を自分で立てられる。進み具合を自分で管理できる。誰かに勉強するよう言われなくても継続できる。分からないことがあれば自分で調べられる。ここまで自分でできる人なら、比較的安い費用で講義と教材を利用できる通信講座は非常に効率の良い勉強方法です。一方、そもそも勉強方法が分からない、講義についていけない、講義を聞けば理解できるのに自分では問題が解けない、何を優先して勉強すればいいのか分からない、学習計画を自分で管理できないという人には、通信講座だけで勉強を進めることが難しい場合もあります。
通信講座でつまずく原因については、以下の記事で詳しく解説しています。通信講座が向いているかどうかは、自分でどこまで勉強を進められるかによって変わります。
宅建の通信講座で合格できないのはなぜ?ついていけない原因と対策
⑤まとめ|宅建の通信講座は最後は講師で選ぶ
宅建の通信講座を選ぶなら、まず大手に候補を絞ります。大手であれば、教材やカリキュラムなどは一定以上の水準にあると考えられるため、講師以外で大きく外す可能性を減らしたうえで講師を中心に選べます。
合格率や料金、教材、質問制度なども確認しますが、それぞれを同じように採点して「総合点」が最も高い講座を選ぶ必要はありません。自分に必要なものだけを確認し、最後は実際に何十時間も授業を受ける講師を見ます。講師については、口コミや評判で候補を絞ったら、YouTubeや無料体験講義を実際に見てください。自分にとって分かりやすいか、声や話し方、テンポなどが自分に合うかを確認します。
さらに、同じ講義を見るときに確認したいのが、その講師に受講生を合格させる「指導力」があるかどうかです。人気があること、話が上手いこと、自分にとって授業が分かりやすいことと、受講生を合格させる指導力が高いことは同じではありません。
具体的に、無料体験講義のどこを見れば講師の指導力を判断できるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
宅建の通信講座で「指導力」がある講師を見抜くための方法
