権利関係では、詐欺・強迫・虚偽表示・心裡留保・錯誤など、意思表示に関する問題が出題されます。「詐欺は取消し」「虚偽表示は無効」といった結論は覚える必要がありますが、それぞれを別々の知識として覚えていると、第三者が登場したときに混乱しやすくなります。意思表示は、なぜその結論になるのか、本人と相手方・第三者のうち誰を保護するルールなのかまで理解すると、それぞれの知識がつながります。問題を解くときは、問題文がどのパターンについて聞かれているのかを判断し、そのパターンの条件から結論を出します。この記事では、意思表示の基本的な考え方から、本試験での問題の解き方まで解説します。

➀意思表示とは?

意思表示とは、自分の意思を外部に示すことです。Aが「この土地を1,000万円で売ります」と言い、Bが「1,000万円で買います」と意思を示して双方の意思が一致すれば、売買契約が成立します。しかし、Aが騙されて土地を売った場合、脅されて売った場合、本当は売るつもりがないのに「売る」と言った場合など、通常とは異なる事情があることもあります。AとBが一緒になって架空の売買を作った場合や、Aが勘違いしたまま契約した場合もあります。このような意思表示を有効とするのか、無効とするのか、取り消すことができるのかが問題になります。

➁意思表示問題の考え方の本質

意思表示を理解するうえで土台になるのが、「取消し」と「無効」の違い、そして第三者が登場したときに誰を保護するのかという考え方です。

「取消し」と「無効」の違い

無効とは、最初から当然に効力がない状態です。取消しは、取り消されるまでは有効ですが、取り消すことによって最初にさかのぼって無効になります。

詐欺・強迫・錯誤は取消し、虚偽表示は無効、心裡留保は原則として有効です。詐欺や強迫を受けたとしても、本人が契約をそのまま維持したい場合もあります。たとえば、騙されたり脅されたりして契約したものの、結果的に取引条件が本人にとって悪くなければ、そのまま契約を維持するという選択もできます。そのため、詐欺や強迫では本人に契約を維持するか取り消すかを選ばせています。一方、虚偽表示では、AとBの双方が本当に契約するつもりがないのに形だけの意思表示をしています。当事者双方が本当の契約として効力を発生させるつもりがないため、AB間では無効になります。

詐欺・強迫は本人に契約を維持するか取り消すかを選ばせるため取消し、虚偽表示は双方とも本当の契約をするつもりがないため無効です。

なぜ第三者が出てくるのか

第三者が出てくるのは、本人と第三者のどちらを保護するかを検討する必要があるためです。

AがBに土地を売り、その後BがCに土地を売ったとします。AB間の意思表示に問題があればAを保護する必要がありますが、CがAB間の事情を知らずに土地を買っていれば、Cを保護する必要もあります。

このように、意思表示に問題がある取引に第三者が関わった場合、本人と第三者のどちらを保護するのかが問題になります。どちらが保護されるのかは、詐欺・強迫・虚偽表示など、それぞれの項目で見ていきます。

③意思表示の5つのパターン

詐欺

詐欺による意思表示は、取り消すことができます。詐欺では、本人を騙したのが契約の相手方なのか、それ以外の第三者なのかによって結論を出すための条件が変わります。

➀相手方からの詐欺
結論:詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません。
AがBに騙されて土地を売った場合、Aはその意思表示を取り消すことができます。その後、Aが取り消す前にBからCが土地を買ったとします。Cが詐欺の事実を知らず、知らなかったことについて過失もなければ、Cは保護されるため、AはCに取消しを対抗できません。反対に、Cが詐欺の事実を知っていた場合や、知らなかったことについて過失があった場合には、AはCに取消しを対抗できます。A自身も騙された被害者ですが、詐欺を知らず、過失もなく土地を取得したCも保護するためです。
相手方から詐欺を受け、その後に取消し前の第三者が登場した場合、第三者が善意無過失なら本人は取消しを対抗できず、悪意または過失があれば取消しを対抗できます。

➁第三者の詐欺
結論:相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、相手方がその事実を知り、または知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができます。
CがAを騙し、その結果AがBに土地を売った場合、Aを騙したCと契約の相手方Bが別人です。BがCの詐欺を知っていた場合や、知らなかったことについて過失があった場合には、Aは取り消すことができます。Bが詐欺を知らず、知らなかったことについて過失もなければ、Aは取り消すことができません。第三者の詐欺では、騙されたAと、詐欺に関与していないBのどちらを保護するのかが問題となり、詐欺について善意無過失のBが保護されます。
第三者の詐欺では、契約の相手方が詐欺の事実を知っていた、または知ることができたのであれば取り消すことができます。相手方が詐欺を知らず、知らなかったことについて過失もなければ、取り消すことはできません。

強迫

強迫による意思表示は、取り消すことができます。強迫も、本人を脅したのが契約の相手方なのか、それ以外の第三者なのかで分けて考えます。詐欺との大きな違いは、本人をより強く保護していることです。

➀相手方からの強迫
結論:強迫による意思表示を取り消した場合、善意無過失の第三者に対しても取消しを対抗できます。
AがBに脅されて土地を売った場合、Aはその意思表示を取り消すことができます。その後、Aが取り消す前にBからCが土地を買ったとします。Cが強迫の事実を知らず、知らなかったことについて過失もなかった場合でも、AはCに取消しを対抗できます。詐欺では善意無過失の第三者が保護されますが、強迫では脅されて意思表示をした本人が保護されます。
相手方からの強迫では、取消し前に登場した第三者が善意無過失であっても、本人はその第三者に取消しを対抗できます。

➁第三者の強迫
結論:第三者によって強迫された場合も、その意思表示を取り消すことができます。
CがAを脅し、その結果AがBに土地を売った場合、Aを脅したCと契約の相手方Bが別人です。Bが強迫の事実を知っていた場合はもちろん、Bが強迫を知らず、知らなかったことについて過失もなかった場合でも、Aは取り消すことができます。第三者の詐欺では善意無過失の相手方が保護されますが、第三者の強迫では脅された本人が保護されます。
第三者の強迫では、契約の相手方が強迫を知っていたかどうかにかかわらず、本人は取り消すことができます。

虚偽表示

結論:相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効です。ただし、その無効は善意の第三者に対抗することができません。

Aが自分の土地への差押えを免れるため、Bと通謀して土地をBに売ったことにしたとします。AもBも本当に土地を売買するつもりはないため、AB間の売買は無効です。問題文では「通謀して」「売買を仮装した」「虚偽の意思表示をした」「差押えを免れるため」などの形で事情が示されます。その後、Bが土地をCに売った場合、CがAB間の虚偽表示を知らなければCは保護され、AはCに無効を主張できません。Cが虚偽表示を知っていた場合には保護されないため、AはCに無効を主張できます。詐欺ではA自身が騙されているのに対し、虚偽表示ではA自身もBと一緒になって事実と異なる外観を作っているため、その外観を信じた善意の第三者を保護します。
虚偽表示では、第三者が善意なら保護され、悪意なら保護されません。善意であれば過失があっても保護され、登記を備えていない場合でもAに対して権利を主張できます。

もう一つ出題されるのが、その人物が第三者に当たるかです。土地について虚偽表示があった場合、Bからその土地を買った人、その土地について抵当権の設定を受けた人、Bの債権者としてその土地を差し押さえた人などは第三者に当たります。一方、その土地上にある建物を借りた人は、土地そのものについて取引した人ではないため、土地の虚偽表示についての第三者には当たりません。
したがって、善意かどうかを判断する前に、その人物が虚偽表示について保護される第三者に当たるのかを判断する必要があります。虚偽表示では、その人物が第三者に当たり、虚偽表示について善意であれば保護されます。

心裡留保

結論:表意者が真意ではないことを知ってした意思表示も有効です。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、または知ることができたときは、その意思表示は無効です。

心裡留保は、冗談をイメージすると分かりやすいでしょう。Aが本当は自分の時計を売るつもりがないのに、Bに「この時計を10万円で売る」と言ったとします。BがAの言葉を本気だと受け取る状況であれば、Aが心の中で「本当は売るつもりではなかった」と考えていても、その意思表示は有効です。相手方からすれば本人の心の中までは分からないため、外部に示された意思を信じたBを保護します。BがAの真意ではないことを知っていた場合や、知ることができた場合には、Bを保護する必要性が下がるため、その意思表示は無効になります。
心裡留保では、相手方が本人の真意ではないことを知らず、知ることもできなければ有効です。相手方が知っていた、または知ることができたのであれば無効です。

錯誤

結論:意思表示に錯誤があり、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、その意思表示を取り消すことができます。

錯誤とは、勘違いによって意思表示をすることです。たとえば、Aが100万円で売るつもりだった物について、勘違いしてBに「10万円で売る」と伝えてしまった場合です。Aが考えていた内容と、実際にした意思表示が食い違っています。取消しの対象となるのは、契約にとって重要な錯誤です。さらに、本人に重大な過失がある場合や、契約をした動機について勘違いしている場合には、それぞれの条件によって取消しができるかが決まります。

➀重大な過失
結論:表意者に重大な過失があったときは、原則として錯誤による取消しをすることができません。
重大な過失とは、少し注意すれば気づけたという程度ではなく、通常求められる注意を著しく欠いていたような場合です。ただし、相手方が表意者の錯誤を知っていた場合、相手方が重大な過失によって錯誤を知らなかった場合、相手方も表意者と同一の錯誤に陥っていた場合には、表意者に重大な過失があっても取り消すことができます。
本人に重大な過失があれば原則として取消しはできませんが、相手方が錯誤を知っていた、相手方も重大な過失によって知らなかった、または相手方も同じ錯誤に陥っていた場合には取り消すことができます。

➁動機の錯誤
結論:法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた場合に、錯誤による取消しの対象になります。
たとえば、Aが「この土地の近くに新しい駅ができる」と聞き、駅ができれば土地の価格が上がると思ってBから土地を購入したとします。しかし、実際には新しい駅ができるという話は事実ではありませんでした。Aは「Bからこの土地をこの価格で買う」という契約内容ではなく、「新しい駅ができて土地の価格が上がるから、この土地を買う」という動機について勘違いしています。表示とは、自分がどのような事情を前提として契約するのかを相手方に分かる形で示すことです。AがBに「この近くに新しい駅ができて土地の価格が上がると聞いたので、この土地を買います」と伝えて契約したのであれば、その事情が契約の基礎となっていることがBにも示されています。そのため、Aは錯誤を理由に取り消すことができます。Aが新駅の話をBに伝えず、自分の心の中だけで「新駅ができれば値上がりするだろう」と考えて土地を買ったのであれば、その事情が契約の基礎とされていることはBに表示されていないため、動機の錯誤として取り消すことはできません。
動機となった事情を契約の基礎として相手方に示していれば取消しの対象となり、自分の心の中だけで前提としていたのであれば動機の錯誤として取り消すことはできません。

③共通錯誤
結論:相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合には、表意者に重大な過失があっても、錯誤による取消しができます。
AもBもある絵画を本物だと思って売買したところ、実際には贋作だった場合のように、本人と相手方が同じ勘違いをしていることがあります。通常であれば表意者に重大な過失があると取消しが制限されますが、相手方も同じ錯誤に陥っていれば、その制限はかかりません。お互いが同じ前提を勘違いしたまま契約しているのであれば、その契約にそのまま縛らせるより、いったん取り消して正しい前提で取引し直せるようにした方がお互いにとって合理的だからです。

お互いが同じ勘違いをしている場合は、本人に重大な過失があっても取消しを認め、正しい前提で取引し直せるようにしています。

④詐欺・強迫・虚偽表示は「誰を守るか」で比較する

詐欺・強迫・虚偽表示は、第三者が登場したときの違いを並べると分かりやすくなります。

パターン原則第三者との関係
詐欺取消し善意無過失の第三者は保護
強迫取消し善意無過失の第三者にも対抗できる
虚偽表示無効善意無過失の第三者は保護

詐欺では本人も騙されていますが、その事情を知らず、知らなかったことについて過失もない第三者も保護します。そのため、第三者が善意無過失なら本人は取消しを対抗できません。強迫では脅されて意思表示をした本人を強く保護するため、第三者が善意無過失でも本人は取消しを対抗できます。虚偽表示では本人自身が相手方と一緒になって虚偽の外観を作っているため、その外観を信じた善意の第三者を保護し、本人は虚偽表示の無効を対抗できません。

第三者が本人を騙したり脅したりした場合は、次の違いがあります。

パターン相手方が善意無過失の場合
第三者の詐欺取消しできない
第三者の強迫取消しできる

相手方から詐欺を受けた後に第三者が登場したなら、その第三者が善意無過失なら取消しを対抗できません。第三者が本人を騙したのであれば、契約の相手方が詐欺について善意無過失なら取り消すことができません。同じ「第三者」という言葉でも、誰が何をしたのかによって結論が変わります。

⑤本試験では何を見て問題を解けばいい?

実際に問題を解くときは、最初にどのパターンについて聞かれているのかを判断します。相手方からの詐欺で取消し前の第三者が登場しているなら、その第三者が善意無過失なら取消しを対抗できず、悪意または過失があれば対抗できます。第三者の詐欺なら、契約の相手方が詐欺を知っていた、または知ることができたのであれば取り消すことができ、善意無過失なら取り消すことができません。相手方からの強迫なら、取消し前の第三者が善意無過失でも取消しを対抗できます。第三者の強迫なら、契約の相手方が善意無過失でも取り消すことができます。

虚偽表示では、その人物が第三者に当たり、虚偽表示について善意なら保護されます。心裡留保では、相手方が本人の真意ではないことを知らず、知ることもできなければ有効となり、知っていた、または知ることができたのであれば無効です。錯誤では、重要な錯誤であることを前提に、本人に重大な過失があれば原則として取り消すことができません。ただし、相手方が錯誤を知っていた場合などの例外があります。動機の錯誤なら、契約の基礎とした事情が相手方に表示されていれば取消しの対象となります。

⑥本試験型の問題で確認しよう

ここまでの内容を、実際の出題形式を意識した問題で確認します。過去問をそのまま使用するのではなく、問われる条件が分かりやすいように初学者向けにしています。

問題1

Aが所有する土地について、次の記述のうち正しいものはどれでしょうか。

ア AがBの詐欺によってBに土地を売却し、Aが取り消す前にBからCが土地を購入した。CはAが詐欺を受けたことを知らず、知らなかったことについて過失もなかった。この場合、AはCに対して詐欺による取消しを主張できる。

誤りです。これは「相手方からの詐欺で、取消し前に第三者が登場する場合」です。Aを騙したのは契約の相手方Bで、その後、Aが取り消す前にCが土地を購入しています。Cは詐欺の事実を知らず、知らなかったことについて過失もない善意無過失の第三者です。そのためCが保護され、AはCに取消しを対抗できません。

イ CがAを騙し、その結果AがBに土地を売却した。BはCの詐欺を知らず、知らなかったことについて過失もなかった。この場合、AはBに対して意思表示を取り消すことができる。

誤りです。これは「第三者の詐欺」です。Aを騙したのはCですが、契約の相手方はBです。BはCの詐欺を知らず、知らなかったことについて過失もありません。この場合はBが保護されるため、Aは取り消すことができません。

ウ AがBに強迫されてBに土地を売却し、Aが取り消す前にBからCが土地を購入した。Cは強迫の事実を知らず、知らなかったことについて過失もなかった。この場合でも、AはCに対して取消しを主張できる。

正しいです。これは「相手方からの強迫で、取消し前に第三者が登場する場合」です。Aを強迫したのはBで、その後、Aが取り消す前にCが土地を購入しています。Cは善意無過失ですが、強迫では脅されたAが保護されます。そのため、AはCに取消しを対抗できます。

エ CがAを強迫し、その結果AがBに土地を売却した。Bは強迫の事実を知らず、知らなかったことについて過失もなかった。この場合、Aは意思表示を取り消すことができない。

誤りです。これは「第三者の強迫」です。Aを強迫したのはCですが、契約の相手方はBです。Bは強迫について善意無過失ですが、第三者の強迫ではAは意思表示を取り消すことができます。

したがって、正解はウです。

問題2

Aが所有する土地について、次の記述のうち正しいものはどれでしょうか。

ア Aは本当は土地を売るつもりがなかったが、Bに「この土地を売る」と意思表示をした。BはAが本気で売るつもりだと信じており、Aの真意ではないことを知ることもできなかった。この場合、Aの意思表示は無効となる。

誤りです。これは「心裡留保」です。BはAが本気で売るつもりだと信じており、Aの真意ではないことを知ることもできませんでした。この場合はBが保護され、Aの意思表示は有効です。

イ AとBが通謀して土地の売買を仮装し、その後BがCに土地を売却した。CはAB間の虚偽表示を知らなかったが、知らなかったことについて過失があった。この場合、Cは保護されない。

誤りです。これは「虚偽表示で、善意の第三者が登場する場合」です。Cには過失がありますが、AB間の虚偽表示を知らないため善意です。虚偽表示では善意であれば第三者は保護されるため、AはCに無効を対抗できません。

ウ AとBが通謀して土地の売買を仮装し、その後Bがその土地を善意のCに売却した。Cがまだ登記を備えていない場合でも、CはAに対して権利を主張できる。

正しいです。これも「虚偽表示で、善意の第三者が登場する場合」です。CはAB間の虚偽表示を知らない善意の第三者です。虚偽表示では善意の第三者は保護され、登記を備えていない場合でもAに対して権利を主張できます。

エ AとBが通謀して土地の売買を仮装した。その土地上にある建物をCがBから借りた場合、Cは土地について虚偽表示の第三者として保護される。

誤りです。これは「虚偽表示で、その人物が第三者に当たるか」を問う問題です。Cが取引したのは土地ではなく、その土地上にある建物です。Cは土地について取引した人ではないため、土地の虚偽表示についての第三者には当たりません。そのため、虚偽表示の第三者として保護されません。

したがって、正解はウです。

問題3

Aは「この土地の近くに新しい駅ができるため、土地の価格が上がる」と考え、Bから土地を購入しました。Aは契約前にBに対して「新しい駅ができて土地の価格が上がると聞いたので、この土地を買います」と伝えていました。しかし、実際には新しい駅ができるという話は事実ではありませんでした。この場合、Aは錯誤を理由として意思表示を取り消すことができるでしょうか。

これは「動機の錯誤」です。Aは「Bからこの土地を買う」という契約内容ではなく、「新しい駅ができて土地の価格が上がるから、この土地を買う」という動機について勘違いしています。AはBに新駅ができることを理由に土地を買うと伝えているため、新駅ができることを契約の基礎としていることがBにも示されています。動機の錯誤では、契約の基礎とした事情が相手方に表示されていれば取消しの対象となります。したがって、Aは錯誤を理由に取り消すことができます。

Aが新駅の話をBに伝えず、自分の心の中だけで「新駅ができるから値上がりするだろう」と考えて土地を購入していた場合は、その事情が契約の基礎とされていることがBに表示されていません。そのため、動機の錯誤として取り消すことはできません。

⑦最後に

意思表示は、「詐欺は取消し」「虚偽表示は無効」と結論だけを覚えるより、なぜその結論になるのか、誰を保護するルールなのかまで理解した方が知識がつながります。詐欺では本人と善意無過失の第三者、強迫では脅された本人、虚偽表示では自ら虚偽の外観を作った本人とそれを信じた第三者というように、誰を保護するのかを考えると、それぞれの違いにも理由が見えてきます。心裡留保では相手方が本人の真意をどのように認識していたのか、錯誤では本人と相手方にどのような事情があったのかによって結論が変わります。本試験では、相手方からの詐欺なのか第三者の詐欺なのか、相手方からの強迫なのか第三者の強迫なのかとパターンを判定し、問題文に書かれた条件から結論まで出せるようにしておきましょう。

⑧意思表示が理解できない方へ

意思表示は、結論を覚えただけでは、登場人物や聞かれ方が変わったときに知識を使えないことがあります。大切なのは、なぜその結論になるのかを理解したうえで、「第三者の詐欺なのか」「詐欺を受けた後に第三者が登場しているのか」など、問題文から使う知識を判断できるようになることです。

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